私が敬愛するリドリー・スコット監督ですが、
作品によっては、酷評される映画も少なくありません。
今回、ご紹介する『悪の法則』 (The Counselor) も、
そんな酷評をされた作品のひとつです。
ただ、この映画は「駄作」と言って切り捨ててしまうには、
あまりに惜しい作品なので、今回は鑑賞にあたっての、
案内のようなものをお伝えしたいと思います。
ミステリーでもサスペンスでもなく、ホラー映画
犯人を当てる知的パズルである「ミステリー」
ハラハラドキドキで引っ張る 「サスペンス」
宣伝や概要だけを見聞きすると、
『悪の法則』は、その両者どちらかに見えます。
ですが、この映画はズバリ「ホラー映画」です。
エイリアンのようなモンスターは出てきません。
しかし『エイリアン』と同じく、「一番怖いのは人間」
という名作ホラーの枠組みに当てはまります。
麻薬取引に軽い気持ちで乗ってしまったが為に、
主人公の「弁護士」は破滅します。
その破滅を実行する、麻薬カルテルがとにかく怖い!
弁解はまったく通用しません。
行動原理も、我々とは完全に異なっています。
圧倒的で理不尽な暴力の嵐に、
ただ、飲み込まれ、悲惨な死、もしくはそれよりひどい状態、
どちらかに追い込まれます。
この世界には、実際に彼らのような存在がいるのだ。
そう思うだけで、背筋が寒くなります。
あえて想像の余地を残した脚本と演出
理不尽で圧倒的な暴力が映画を支配していますが、
意外なことに、直接描かれるシーンは少ないです。
あえて「映さない」ことによって、観客の想像力を、
刺激し、恐怖を倍増させることを狙っています。
(本当に人がゴミのように死にます)
また、脚本は『ノーカントリー』 (No Country for Old Men)
の原作者であるコーマック・マッカーシー氏が務めています。
『ノーカントリー』と同じく、本作も余計な説明はありません。
状況と会話があるだけで、事件の全体像は欠けているパーツを、
観客が推測しなければなりません。
今回の破滅を招いた張本人は、簡単にわかりますが、
いちいち説明がないので、全容は想像するのみです。
(考察系のサイトがあるので、探してみてください)
「映さない」「語らない」ことによって、
本作は理不尽な恐怖を倍加することに成功しています。
まとめ
以上2点で、『悪の法則』の魅力をご紹介しました。
注意点といたしましては、「オリジナル版」よりも、
「特別編集版」(21分長い) を観た方が良いと思います。
「なんでここをカットしちゃったの!」
と突っ込みたくなる、重要シーンが入っています。
また、残虐シーンもしっかり描かれていて、
ホラーとしての質も高まっています。
名作『セブン』にも匹敵する、後味の悪さ、
そして、不可解さに翻弄される。
そんな映画体験が嫌ではなかったら、
本作は最高の憂鬱な体験を約束してくれます。
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