私は長年、スティーブン・キングのファンをやっています。
キングファンを公言する方は、著名人にも多いですが、
『ダークタワー』シリーズを読破した方は少ないのではないでしょうか。
なにせ文庫本にして17冊を超す大長編ですから、読むだけでも大変です。
今回は、この『ダークタワー』シリーズをご紹介したいと思います。
設定がめちゃくちゃ
物語は『中間世界』と呼ばれる異世界と、現実世界の行き来で進みます。
主人公の名は、ローランド。 最後のガンスリンガーです。
とにかく、このシリーズ、世界設定がめちゃくちゃです。
『中間世界』は文明崩壊後の未来の地球なのですが、
中世ファンタジーのような設定に何故か拳銃使いが出てきます。
いわば、法の番人なのですが、その点で並の作家なら NG。
更に、SF的要素(ロボットやAI搭載の暴走機関車)、そして魔術も出てきます。
闇鍋にあらゆる食材をぶち込み、そのまま煮込んでしまった感じです。
だが、それでも面白い!
上記の設定だけ見たら、ライトノベルの一次選考で落とされそうですが、
キング御大、その設定を丸呑みし、見事なエンターテイメントに昇華しています。
特に、第五部から第六部への切り替えが巧みで、本をめくる手が止まりません!
主人公のローランドはクリント・イーストウッドがモデルです。
キングが『荒野の用心棒』を映画館で観ているときに、
このストーリーを思いついたそうです。
マカロニウェスタンと異世界ファンタジー、さらにSF。
聞いただけでげっぷが出そうですが、見事に消化しています。
ただ、びっくりするのは、小説内にキング本人が出てくることです。
この辺りは、ファンでも賛否が分かれるようです。
ラストがいまいち……
物語は宇宙の中心である「暗黒の塔」が倒れかけていて、
それを修復するために、ローランドと仲間たちが旅をする、
冒険譚となっています。
ただ異世界を旅するだけでなく、時折現れる扉をくぐって、
現実世界に足を踏み入れたりもします。
まさにキング作品の集大成である本作は、
キング世界の悪の中心である「深紅の王」が出てきます。
ネタバレを防ぐために、あえて詳細は伏せますが、
この「深紅の王」のやられ方が格好悪すぎます。
複数の平行宇宙に手下を派遣し宇宙の崩壊を狙う親玉にしては、
あまりにも情けない倒され方です。
(キング自身もあとがきで「出来が良くない」と認めるほどです)
まとめ
「『ダークタワー』シリーズを人に勧めるか?」と聞かれれば、
多少躊躇するものがあります。
私自身は楽しめたのですが、キング初心者お断り(過去作のキャラが登場する)、
そもそも世界観が(悪い意味で)狂っている。
などなど、問題点が山積しています。
しかし、キング作品に触れた人で、その魅力にとらわれた人は、
挑戦してみる価値はあるかと思います。
果たして、『暗黒の塔』は再建されるのでしょうか?
それはあなた自身の目でお確かめください。
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